北高卒業生の流儀

松浦真弓 JAXAフライトディレクター 地球から宇宙に荷物を送り届ける。
国際宇宙ステーションに物資を届ける仕事

国際宇宙ステーションに物資を届ける仕事

地球の約400km上空には、国際宇宙ステーションが浮かんで地球の周りを回っている。そこに長期滞在する宇宙飛行士のための食料、衣料などの物資や、日本の実験棟「きぼう」などに実験材料を運ぶための補給機「こうのとり」を地上から管理して、国際宇宙ステーションに無事に届ける作業を統括するフライトディレクターを務めている。日本女性初としてのパイオニアでもある。

きっかけは「宇宙の果てって何?」

小学生の頃に宇宙に興味を持った。
ある日、学校の先生が理科の授業中に「宇宙の果ては誰もわからない」と言った言葉に「果てって何だろう?」と強く思ったのがきっかけだ。星を見るのが好きになった。アニメの「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」はもちろん見た。その後に見たカール・セーガンの科学TV番組「コスモス」がとても面白く、宇宙に関わる仕事をしたいと思い始めた。高校では理系クラス。ただ、部活動は天文学部などではなく、女子軟式テニス部に所属した。体育会系で鍛えられた部分が社会人になってから生かされている気がする。そして短期大学で電波工学を学ぶ。ちょうど就職する頃、男女雇用均等法が施行され、技術職でNASDA(特殊法人宇宙開発事業団・2003年にJAXAとして統合される)に就職した。人工衛星を追跡をする仕事に数年間携わった後、1998年に筑波での管制室の仕事に異動。そこで管制官の仕事を知るために、米国ヒューストンに派遣され、NASAで約6ヶ月間学んで帰国。2008年に実験棟「きぼう」の初打ち上げに携わる。その後、2012年から「こうのとり」のフライトディレクターの任務に携わっている。

きっかけは「宇宙の果てって何?」
「こうのとり」を1年かけて準備

重力圏を飛び出していくのが夢

「こうのとり」を1年かけて準備

「こうのとり」はおよそ1年に1度打ち上げられ、そのための準備を約1年間かけて整える。直径4.4m、全長9.8mの機内に積み込まれるさまざまな荷物の管理、子細にわたる手順書作り、運用のための訓練など全体的な作業を管理していく。打ち上げ当日は、ロケットが種子島から打ち上がって、約30分後にロケットから「こうのとり」が切り離された後に、オペレーションの仕事を開始する。国際宇宙ステーションに届くまでの日数は3〜4日。それまで、ほかに3名いるフライトディレクターとともに交代で、24時間態勢で見守る。宇宙空間の中で、数センチ単位で機体を動かす緻密な作業だ。トラブルなどに直面してもスタッフといろいろ話し合いながらミッションをやり遂げる時にやりがいを感じる。

重力圏を飛び出していくのが夢

現在、「こうのとり」は宇宙ステーションに物資を届けた後は地球に戻らない。大気圏再突入時に燃えつき、1回で役目を終えるが、将来は地球に戻ってくるようにできたらいいなと思う。また、地球の周りを回る宇宙ステーション向けだけでなく、将来は月や火星など、地球の重力圏から飛び出した空間に物資を運ぶ仕事をしてみたい。いろいろな国で協力して開発する話もあるので携わってみたいと思っている。

プロフェッショナルとは・・

「こだわり」。
職人みたいなこだわりを持って追求すること。

松浦 真弓(13期)

JAXA(宇宙航空研究開発機構)フライトディレクター

1965年埼玉県草加市生まれ。東海大学短期大学を卒業後、宇宙開発事業団(現:宇宙航空研究開発機構)に入社。女性技術者第一期生として、衛星やロケットの軌道追跡を担当する。1998年頃よりフライトディレクターの勉強を始め、2008年の「きぼう」第一便の打ち上げでは地上の運用管制チームの指揮を執り、プロジェクトの成功に貢献した。
越谷北高校在学中の所属は女子軟式テニス部、旧姓:戸村。

取材・撮影:石井真弓(写真家・文筆家 越谷北高卒業生)

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